アッヴィ[ABBV]:ヒュミラ依存脱却へ向けた2つのニュースとは?~2019年度Q2決算と掘り下げ~
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はじめに

アッヴィ[ABBV]は米国株投資家のみなさんに大人気の銘柄ですね。

アッヴィ[ABBV}は、2013年にヘルスケアカンパニーであるアボットラボラトリーズからの分社化により誕生したバイオ医薬品企業です。

ヒュミラを製造・販売していることで有名ですが、実は医療業界にいながらよく知らない会社の一つなんですよね。

ですので、2019年度Q2決算書を読みながら、一度きちんと調べてみることにしました。

 

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アッヴィ[ABBV}の2019年度Q2決算

2019年7月26日に2019年度Q2決算が発表されました。

EPS 売上高
予想 $2.21 $80.86億
結果 $2.26 $82.55億

 

EPSも売上高も予想を上回りました。

地域別の売上高は、米国内では$59.64億、米国外では$22.91億でした。前年同四半期と比較して、米国外では13.8%減少でしたが、米国内では9.5%増加しましたので、全体では1.5%増加しました。

 

 

領域別の売上高は以下にまとめました。%は前年同四半期との比較です。

 

領域別売上高 米国内 米国外 全体
自己免疫疾患領域 $49.18億 8.9%増加 30.7%減少 3.9%減少
血液腫瘍領域 $12.68億 35.5%増加 54.1%増加 39.1%増加
C型肝炎ウイルス領域 $7.84億 6.2%減少 25.4%減少 17.1%減少
他領域主要製品 $10.31億 6.9%減少 3.2%減少 5.7%減少

 

 

ガイダンスでは、以前の予想EPSは$8.73〜$8.83でしたが、今回$8.82 〜$8.92に上方修正されました。

 

では、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

自己免疫疾患領域は、なんといってもヒュミラですね。この領域の売上高$49.18億のうち、ヒュミラの売上高は$48.7億です。しかも、アッヴィ[ABBV]の今四半期の売上高が$82.55億ですので、約60%がヒュミラの売上高ですね。これは本当にすごい薬です。

ヒュミラはヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体と呼ばれる生物学的製剤で、関節リウマチ 、化膿性汗腺炎、尋常性乾癬・関節症性乾癬・膿疱性乾癬、強直性脊椎炎、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、腸管型ベーチェット病、クローン病潰瘍性大腸炎、非感染性の中間部,後部又は汎ぶどう膜炎に適応があります。

たとえば関節リウマチでは、TNFαが関節の細胞に結合することによって,関節の炎症や関節の破壊を引き起こします。このTNFαにヒュミラが結合することで、関節の細胞と結合することができなくなるため,関節の炎症や関節の破壊を抑えることができるわけです。

なんといってもヒュミラの最大の特徴は2週に1回の皮下注射であることです。また、皮下注射ですので、きちんと指導を受ければ自宅で自己注射することも可能です。

これまでは無類の強さを誇ってきたヒュミラですが、特許切れによるバイオシミラーとの競争でさすがに売上高が下がってきています。特に米国外で顕著で、今四半期の米国外の売上高は前年同四半期より31.0%減少しました。米国内ではまだバイオシミラーは発売されていませんので全体ではなんとか3.9%の減少で踏ん張っています。

なぜ、バイオシミラーの販売について米国内外で差がついているかというと、アッヴィ[ABBV}とバイオシミラー製造企業とでそういった条件の和解が成立したためです。バイオシミラー製造会社から特許使用料を受け取ることを条件に、欧州では2018年から、米国では2023年からバイオシミラーを発売することで和解が成立しました。欧州市場を差し出して米国市場をなんとか守ったという感じですね。

 

次に血液腫瘍領域です。こちらの領域の主力はイムブルビカです。

イムブルビカの今四半期の売上高は米国内が$8.86億、米国外が$2.13億で、全体で$10.99億でした。前年同四半期と比較すると、米国内では27.9%増加、米国外では35.9%増加で、全体では29.3%の増加でした。

イムブルビカは、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤と呼ばれる抗悪性腫瘍剤で、マントル細胞リンパ腫や慢性リンパ性白血病に適応がある薬です。

どこかで見たような・・・と思ったら、ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]の分析の際に出てきましたね。この薬はどうやらアッヴィ[ABBV]子会社のファーマサイクリックス社とジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]子会社のヤンセンファーマの共同販売のようです。

ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]の2019年度Q2決算では、米国内が$3.67億、米国外が$4.63億で、全体で$8.31億でした。こういった販売戦略は、ガチンコで競争するケースもあればある程度棲み分けするケースもあると思いますので一概に比較は難しいですが、米国内ではアッヴィ[ABBV]の売上高が、米国外ではジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]の売上高が多いという結果でした。米国内でも米国外でも、またいずれの企業でも、前年同四半期より売上高が結構のびてますので、もしかしたら今後もさらなる成長が期待できるのかもしれません。

 

次にC型肝炎ウイルス領域です。この領域の主力はマヴィレットです。

マヴィレットは、グレカプレビル水和物とピブレンタスビルの配合剤で、C型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス薬です。

マヴィレットの今四半期の売上高は米国内が$3.96億、米国外が$3.84億で、全体で$7.80億でした。前年同四半期と比較すると、米国内では6.2%減少、米国外では20.4%減少で、全体では14.0%の減少でした。

マヴィレットはすごいみたいですね。あらゆるタイプのC型肝炎がこの薬剤で治療可能で、またこれまでは治療期間が最短で12週間だったのが、一部のタイプでは最短8週間まで短くなっているようです。発売後は第一選択として使用されることが多いようですね。

しかし、慢性C型肝炎はこの数年間でかなり治療し尽くされています。しかも新たな感染者はほとんど出現しないため、患者数は減っていく一方です。あとは潜在的な未治療者がどれだけいるかにかかっていると思いますが、これから売上高をどんどん伸ばしていくのは正直難しいと思われます。せっかくいい薬なのに残念ですね。

 

次は他領域の主力製品です。

まずはCreonです。日本ではリパクレオンという商品名で販売されています。

Creonは膵消化酵素阻害剤という薬です。慢性膵炎や膵切除後や膵嚢胞線維症によって膵外分泌機能不全となった患者さんに適応があります。

この薬剤は、日本ではマイランEPD合同会社が製造・販売していますし、アッヴィ[ABBV]は米国内でしか販売していないようですね。

今四半期の米国内での売上高は$2.57億で、前年同四半期より17.5%の増加でした。

 

次はLupronです。日本ではリュープリンという商品名で販売されています。

LupronはLH-RH誘導体マイクロカプセル型徐放性製剤という薬で、子宮内膜症、閉経前乳癌、前立腺癌などに適応があります。

今四半期の売上高は米国内が$1.68億、米国外が$0.41億で、全体で$2.09億でした。前年同四半期と比較すると、米国内では6.4%減少、米国外では3.2%増加で、全体では4.5%の減少でした。

 

次はSynthroidです。レボチロキシンナトリウムという薬剤で、甲状腺機能低下症などに適応があり、甲状腺ホルモンを補充する目的で投与します。

Synthroidは米国内でのみ販売されており、今四半期の売上高は$2.03億でした。前年同四半期と比較すると4.9%の増加でした。

これはよく使われる薬ですね。甲状腺機能低下症で他の薬が使用されていることはあまり見たことがありません。しかし、ジェネリックも販売されている薬にもかかわらず売上高が増加していることに驚きました。日本の先発品としてはあすか製薬がチラーヂンという薬を販売しています。

 

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ヒュミラ依存からの脱却を目指して~アラガン[AGN]買収~

初めてアッヴィ[ABBV]の決算を見ましたが、想像以上にヒュミラへの依存度が高くて驚きました。

依然として売上高の6割を稼ぐヒュミラがすごすぎると考えるのか、ヒュミラの売上高が依然として6割も占めてしまったままのアッヴィ[ABBV]の備えが脆弱と考えるかは、見方次第ですね。

これまでジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]、メルク[MRK]、ファイザー[PFE]の分析で分散されたポートフォリオを見ただけに不安に思うだけなのかも知れません。

ただ、アッヴィ[ABBV]の経営陣もヒュミラへの依存度が高すぎるまま2023年を迎えることには不安を感じていたようで、2019年6月25日にアラガン[AGN]を買収すると発表しました。買収額は約$630億で、2020年初めの買収完了を目指すようです。

 

アラガン[AGN]も2019年8月6日に2019年度Q2決算を発表したばかりでしたので、少し見てみましょう。

アラガン[AGN]の2019年度Q2の売上高は$40.90億でした。アッヴィ[ABBV]の約半分ですね。

今四半期の売上高が$1億以上であった薬だけピックアップしました。

 

 

ボトックスは、美容整形でのしわ取りで有名ですが、治療にも使用されます。売上高も治療用の方が多かったですね。治療用は上肢や下肢の痙縮、顔面痙攣、眼瞼痙攣などに適応があります。痙縮というのは、脳血管障害などの後遺症により筋肉が緊張しすぎて動かしにくくなる状態のことです。あとは、泌尿器科領域で、難治性過活動膀胱の治療にも使われるようです。

ジュビダームはヒアルロン酸使用軟組織注入剤です。

アロダームは人工真皮です。

Restasisは、シクロスポリンという免疫抑制剤の点眼薬ですが、ドライアイに使用されるようです。日本ではドライアイに対する使用は認められていないようですね。

Lumiganは、緑内障治療の点眼薬ですが、まつげの育毛効果も実証されているそうです。

Ozurdexは、副腎皮質ステロイド剤で糖尿病性黄斑浮腫の治療に使用されます。

Alphaganは緑内障治療の点眼薬です。

Vraylarは、統合失調症や双極性障害治療に適応があります。

Viibrydは大うつ病性障害の治療薬です。

リンゼスは、新しいタイプの便秘薬です。

Bystolicは、βブロッカー と呼ばれる種類の降圧薬です。

Lo Loestrinはピルです。

本当は領域別の比率を出したかったのですが、決算書が意外にも不親切で領域別になっていませんでした。全薬剤を調べる時間はなかったので断念しました。

 

ボトックスが売上高の約25%を占めますが、全体的にはかなり分散されたポートフォリオではないでしょうか。領域も、美容整形領域、眼科領域、中枢神経領域など多岐にわたっています。アッヴィ[ABBV]の主力領域と全くかぶっていませんので、アッヴィ[ABBV]がポートフォリオを多様化するという目的は達成できますし、ヒュミラへの依存度も下げることができますね。

 

ヒュミラ依存からの脱却を目指して~新薬の開発~

アッヴィ[ABBV]がヒュミラへの依存度を下げるためにもう一つできることは、ヒュミラにかわって業績を牽引することができる新薬の開発です。

アッヴィ[ABBV]は、2019年8月16日に、中等度から重度の関節リウマチの治療薬として、RINVOQの承認を受けました。

RINVOQはJAK阻害剤と呼ばれる種類で、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体という生物学的製剤であるヒュミラとは種類が異なります。経口薬であることも特徴の一つです。

JAK阻害薬としては、すでにファイザー[PFE]がゼルヤンツを、イーライリリー[LLY]がオルミエントを販売しています。現在は、基本的にはヒュミラのような生物学的製剤が効かなかった患者さんに対して使用することが多いようです。

ただ、JAK阻害薬はずっと大きな懸念を持たれています。重篤な感染症や悪性腫瘍が出現しやすいのではないかと疑われているようです。それが理由で、あまり積極的には使用されず、思ったより売上高はのびていないようですね。

その懸念を払拭するために、ファイザー[PFE]はゼルヤンツを、イーライリリー[LLY]はオルミエントを使用している患者さんの全例調査を行っています。この全例調査の最終結果において「重篤な感染症も悪性腫瘍も多く出現するという事実はない」という結果が出れば、急激に売上高が増加する可能性があるかもしれません。そうなれば、同じ種類の薬剤であるRINVOQも売上げを伸ばすことができそうです。

また、新薬開発に関しては、これまでアッヴィ[ABBV]が開発していた新薬だけでなく、アラガン[AGN]が開発中の新薬も手に入れることができることも大きいかもしれません。

はたして、2023年までに新たなブロックバスターを開発することはできるでしょうか?

 

まとめ

 

ところで、Zenさんはアッヴィの株をどれくらい持っているんですか?

一切持っておりません!
ファイザー[PFE]&メルク[MRK]&ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]の分析記事も参考にしていただけましたら幸いです。
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