プロクター・アンド・ギャンブル[PG]が考える3つの成長分野と重要視している5つの要素とは?
stevepb / Pixabay
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はじめに

先日は、プロクター・アンド・ギャンブル[PG]の2019年度Q4決算について記事にしました。

 

今回は、2018年のAnnual Reportを読んでみて、プロクター・アンド・ギャンブル[PG]が重視している方針や戦略について少し調べてみたいと思います。

 

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2018年プロクター・アンド・ギャンブル[PG]の業績

まずは売上高の部門別比率です。

 

 

ファブリック&ホームケア、つまり洗剤の売上高が32%を占め、ベビー&フェミニン&ファミリーケア、つまり紙製品の売上高が27%を占めています。この2つの売上高で約6割を占めることになります。

 

次に売上高の地域別比率です。

 

 

欧米で約7割弱を占めています。ここで北米に含まれるのは米国・カナダ・プエルトリコのようです。

日本を含むアジア太平洋地域は9%です。思ったより少ないですね。やはり日本で花王などの日本企業が強いことが影響しているでしょうか。

さらに中国を含む中華圏も9%ですね。こちらも意外に少ないですね。中国市場でも日本企業が頑張っているからでしょうか。花王のメリーズが中国で大人気で、中国人が日本に買い占めに来ていたこともありましたね。あの時はメリーズを愛用していたのでちょっと困りました(笑)

ちなみに、通常は中華圏とは中華人民共和国・台湾・香港・マカオを指すようです。

 

では、2018年の業績に関して少しまとめてみましょう。

EPSは$4.22で、8%の増加でした。これは予想範囲の上限を超えました。

売上高の成長目標は2-3%でしたが、結果は1%でした。10部門のうち8部門で3%以上成長しましたが、ベビーケア部門とグルーミング部門の減少で相殺されました。

地域別では、中国は2年前に売上高は5%も減少しましたが、今年は7%の増加となりました。前半に6%、後半に8%、Q4に10%増加しました。インドは売上高が2桁増加し、メキシコと日本の売上高は1桁台半ばの増加でした。

電子商取引は非常に好調で、30%増加し、売上高は$45億に迫りました。これは総売上高の約7%になります。

株主還元は合計で$140億以上還元しました。約$70億の自社株買いを行い、約$73億の配当金を支払いました。4%の増配を行いました。これで62年連続増配となり、配当金は128年連続で支払ったことになります。米国企業は本当に株主還元に積極的ですね。

 

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プロクター・アンド・ギャンブル[PG]が期待する3つの成長分野

Annual Reportで3つの成長分野があげられています。

 

まずは成人の尿もれ(失禁)です。

この分野は大きく急成長している分野のようで、小売売上高は1桁台後半の成長で約$30億になっており、プロクター・アンド・ギャンブル[PG]がその成長を牽引しているとのことです。

プロクター・アンド・ギャンブル[PG]は「Always Discreet」という成人の尿もれ製品を販売しています。

米国でこのブランドが発売される前は、3人に1人の女性が尿もれを経験したことがあると話しているにもかかわらず、たった9人に1人だけしか尿もれ対策の製品を使用していなかったそうです。2018年にはこの「Always Discreet」の売上高は25%以上成長しました。

また、このブランドによって、フェミニンケア部門は11四半期連続で売上高が増加したとのことです。

国連の世界人口推計によると、世界の人口のうち65歳以上が占める割合は、2019年は11人に1人(約9%)ですが、2050年までには6人に1人(約16%)に増加する見込みです。また、欧米では、2050年までに4人に1人が65歳以上となる可能性があるとのことです。

世界で高齢化が進んでいくことは間違いありませんので、こういった分野でさらなる成長が見込めることは間違いなさそうですね。

 

次にオーバー・ザ・カウンターヘルスケアです。いわゆるOTC医薬品のことですね。

OTC医薬品とは、処方箋無しで薬局やドラッグストアで購入できる医薬品のことです。カウンター越しに医薬品を販売する手法から、Over-The-Counter、略してOTCと呼ばれるようになりました。

高齢者や健康を意識する消費者が増加していることから、ヘルスケア部門は非常に魅力的な部門となっています。

プロクター・アンド・ギャンブル[PG]は、ドイツのメルク(Merck KGaA)の消費者ヘルスケアビジネス部門を買収しました。

この買収によって、より広い範囲の地域の消費者に、より幅広い分野の治療薬を提供できるようになることで、毎年約$10億売上高を増加させることになる見込みのようです。

このドイツのメルク(Merck KGaA)と、米国に上場しているメルク(Merck&Co.,Inc)[MRK]は、現在は異なる企業ですが、元をたどると同じ会社であったようです。1668年にメルク(Merck KGaA)がドイツで設立され、米国のメルク(Merck&Co.,Inc)[MRK]はその子会社として1891年に設立されました。しかし、第一次世界大戦中にドイツのメルク(Merck KGaA)から米国のメルク(Merck&Co.,Inc)[MRK]が接収され、独立した新会社となったわけです。

まあお互い思うところは色々あるようですが、一応取り決めがなされており、ドイツのメルク(Merck KGaA)は北米では「メルク」を名乗らずに「EMD(Emanuel Merk, Darmstadt」を用い、一方米国のメルク(Merck&Co.,Inc)[MRK]は北米以外では「メルク」を名乗らずに「MSD(Merck Sharp and Dome)」を用いることになっているようです。

先日、ファイザー[PFE]の記事でも書きましたが、ファイザー[PFE]とグラクソ・スミスクライン[GSK]の一般消費者向けヘルスケア部門も統合することが決まっています。グラクソ・スミスクライン[GSK]は、将来的にはこの統合した合弁会社を独立企業として分離する予定のようです。製薬業界では、OTC医薬品部門を切り離し、医療医薬品の新薬開発に注力していく流れになってきています。このファイザー[PFE]の一般消費者向けヘルスケア部門にプロクター・アンド・ギャンブル[PG]も興味を示していたという噂もあるようです。

製薬メーカーはOTC医薬品部門を切り離す流れになっている一方で、製薬メーカーではないプロクター・アンド・ギャンブル[PG]は「OTC医薬品部門は成長分野である」という考えを持っているようです。この考え方の違いはなかなか興味深いですね。

 

3つ目はナチュラル製品です。

ナチュラル製品分野はこの先5年間以上にわたって毎年約7%の成長が期待されています。特にプロクター・アンド・ギャンブル[PG]があげているのは。植物由来成分洗剤と、添加物を使用していないおむつです。

これまで消費者は植物由来成分洗剤を使いたいと思っても、その洗浄力に物足りなさを感じることがありましたが、プロクター・アンド・ギャンブル[PG]は「Tide purclean」が洗浄力を備えた初めての植物成分由来洗濯洗剤であるとしています。その他にも植物成分由来洗濯洗剤として、ベビー用洗剤「Dreft pertouch」、洗濯用洗剤「Gain Botanicals」、柔軟剤「Downy Nature Blends」などが販売されているようです。

また、ナチュラルベビーケア分野はベビーケア部門の5%を占め2桁成長しています。米国で2018年4月に発売されたパンパースピュアプロテクションは、漂白剤や香料やパラベンを使用していないにもかかわらず際立った吸収力とガード力を持っており、現在無添加おむつ分野で最も売れているおむつだそうです。

 

プロクター・アンド・ギャンブル[PG]が大切にしている5つの要素

プロクター・アンド・ギャンブル[PG]は、以下の5つの要素を消費者に提供することで高い優位性を確立しようと考えています。

それは、「優れた製品」、「優れたパッケージ」、「優れたブランドコミュニケーション」、「優れた小売の実行力」、「消費者と小売店に対する価値方程式」の5つの要素です。

製品が優れていれば、消費者は違いを実感します。

優れたパッケージは消費者をひきつけます。

ブランドコミュニケーションによって、製品やパッケージのすばらしさをうまく消費者に伝えることができれば購買につながります。

店舗においては適切な店舗網、製品の型・サイズ、価格と陳列、またオンラインにおいては適切なコンテンツ、品揃え、評価、レビュー、検索と登録機能を持つことによって、消費者の購買につなげることができます。これが小売の実行力です。

消費者に対する価値とは、消費者が実感できるほど優れている製品、使いやすいパッケージ、消費者をひきつけるブランドコミュニケーション、そしてそれらが店頭やオンラインでわかりやすく、かつ買い物しやすいように提供されていることです。また、小売店に対する価値とは、利益、来店回数や購入品数の増加、各分野の成長などです。価値の方程式を意識すれば、競合するどの価格帯においても消費者や小売店から高い価値を認めてもらうことができるようになるわけです。

例としてはSK-Ⅱがあげられています。SK-Ⅱは15四半期連続で20%以上売上が成長しています。高品質ビューティー市場は1桁台後半で成長していますが、SK-Ⅱはこの分野でシェアを拡大し続けています。

まずは「優れた製品」についてです。たとえばSK-Ⅱの全製品は、SK-II独自の成分であるピテラを含んでいます。このピテラを90%以上含む製品が「フェイシャルトリートメントエッセンス」で、SK-Ⅱのベストセラーです。このピテラという成分によって差別化をはかっています。消費者は、ピテラを含む製品を使用して違いを実感し、そして再び購入することにつながるわけです。

次は「優れたパッケージ」です。確かにSK-Ⅱの包装は洗練されていて高級感があります。また限定版パッケージではアーティストとコラボしたりすることで消費者をひきつけます。

次は「優れたブランドコミュニケーション」です。たとえば今ですと、日本のSK-Ⅱのホームページでは「すっぴん素肌プロジェクト」を行っています。これは、世界を舞台に活躍する6人が「フェイシャルトリートメントエッセンス」だけを頼りにすっぴんを披露する大胆なチャレンジに挑戦するといった企画です。こういった企画でブランドをアピールすることは、新規のSK-Ⅱユーザーを23%以上増やし、売上高を15四半期連続で増やし、また2018年には30%以上成長したことに貢献しています。

次は「優れた小売の実行力」です。SK-Ⅱカウンターでは、美容部員が最先端の皮膚分析機器を使用して個々にスキンケアをアドバイスすることで購買につなげます。また、最近は「Future X Smart Store」という体験型小売店を出店したりもしているようです。日本では原宿に期間限定で出店していたようですね。消費者は店舗においては買わなければならないような圧力を感じてしまいがちです。特にSK-Ⅱのような高価格帯商品になるとさらに敷居が高くなってしまいます。こういった体験型の店舗においては、AIによって鏡の前に座るだけで肌状態を測定することができたり、美容部員のかわりにロボット美容アドバイザーから商品を紹介されたり、消費者に新しい買い物体験を提案していました。こういったプロモーションは、新たな顧客の発掘につながるでしょうね。

そして「価値の方程式」です。「優れた製品」「優れたパッケージ」「ブランドコミュニケーション」「小売りの実行力」を組み合わせることによって、消費者に喜びを提供し、価値を認めてもらうことができます。

こういったことを全てのブランドに当てはめることで、価値を高め、成功につなげているわけですね。

 

プロクター・アンド・ギャンブル[PG]によると、これらの5つ要素のうち少なくとも4つで優位であれば、家庭への浸透・市場規模・市場シェア・売上高・利益のすべてにおいて80%の確率で成功するようですが、優位であるのが3つ以下であれば期待した結果を出すことはできないそうです。こういったしっかりした戦略を持っているからこそ、市場を拡大していくブランドと撤退するブランドを明確にして速やかに決断することができるのかもしれません。

 

生産性の向上への取り組み

ここ数年間、プロクター・アンド・ギャンブル[PG]は生産性の向上によってコストを削減しています。2016 年度までにすでに 100 億ドル削減したとのことですが、2017 年度から 2021 年度にかけて再び100 億ドルを削減する5カ年計画の最中で、現在はその中間点です。

サプライチェーンを変革することで、コストと在庫を削減しています。具体的には、リアルタイムのPOSデータをサプライチェーンと同期することで、消費者の購入行動によって工場の稼働や材料の注文を調整することができるようになります。その結果、在庫を減らすことができるわけです。

また、以前は1工場につき1部門の製品しか供給できなかったのですが、新しい工場では複数の部門の製品を供給でき、またデジタル化によって自動で生産を調整することもできるため、こちらも在庫を減らすことにつながっています。

以前にマイクロソフト[MSFT]のことを調べているときに少し出てきましたが、こういったところでAzureやAWS(Amazon Web Services)といったクラウドサービスが活用されているようです。プロクター・アンド・ギャンブル[PG]がどのクラウドサービスを利用しているかは知りませんが、たとえばソフト[MSFT]を利用している企業であれば、クラウドサービスのAzureやインテリジェントビジネスアプリケーションのDynamics365などが活用されるのではないかと思われます。

 

まとめ

今回は、プロクター・アンド・ギャンブル[PG]のAnnual Reportから、今後成長が期待されている3つの分野とマーケティングにおいて重要視されている5つの要素について記事にしました。

こういうことを知ることによって、今後、ドラッグストアやCMでのプロクター・アンド・ギャンブル[PG]製品の見方が少し変わるかもしれませんね。

安定した経営戦略によって今後も業績がのびていくこと、また積極的な株主還元が継続されることを期待したいと思います。

 

 

 

今回の記事で少し出てきたファイザー[PFE]とマイクロソフト[MSFT]の記事は以下です。

 

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