【電子タバコ】トランプ政権がフレーバー付電子タバコの規制強化へ〜アルトリアグループ[MO]への影響は?〜
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はじめに

2019年9月11日、トランプ大統領はフレーバー付の電子タバコの販売を禁止する方針を表明しました。

これまでも米国食品医薬品局(FDA)は電子タバコについて規制を行ってきました。

しかしそれでも、電子タバコを嗜好する青少年の増加が止まらないこと、そして電子タバコが原因ではないかと疑われる死亡例も出てきたことから、連邦政府がついに動き出したということです。

私は、アルトリアグループ[MO]のホルダーです。アルトリアグループ[MO]は、2018年末に米国内でトップシェアの電子タバコメーカーJUULに出資しています。

今後、この規制がアルトリアグループ[MO]の業績にどのような影響を与えうるかについて、できる範囲で考えてみました。

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電子タバコとは?加熱式タバコとの違いは?

私は非喫煙者ですのでつい最近までよくわかっていなかったのですが、「電子タバコ」と「加熱式タバコ」は異なるものなんですね。

1.電子タバコ E-cigarettes
a). 液体(リキッド)を加熱してエアロゾルを発生させて吸引するタイプ
b). 液体(リキッド)には、ニコチンを含むものと含まないもの、の 2 種類がある注)
 ニコチンを含むもの:electronic nicotine delivery systems (ENDS)
 ニコチンを含まないもの:electronic non-nicotine delivery systems (ENNDS)
 注)海外ではニコチン入りリキッドが販売されている(ENDS)。一方、日本では、医薬品医療機器法(旧 薬事法)による規制により、ニコチン入りリキッドは販売されていない。


2.非燃焼・加熱式タバコ Heat-not-burn tobacco
a). 葉タバコを直接加熱し、ニコチンを含むエアロゾル吸引するタイプ(商品名 iQOS, glo)
b). 低温で霧化する有機溶剤からエアロゾルを発生させた後、タバコ粉末を通過させて、タ
バコ成分を吸引するタイプで、電子タバコに類似した仕組み(商品名 Ploom TECH)

日本呼吸器学会「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解」より

日本ではiQOSを中心とした加熱式タバコがかなりの勢いで普及していますが、米国では電子タバコが非常に普及しています。

ちなみに、米国では、iQOSが2019年4月30日に米国食品医薬品局(FDA)にようやく承認されたばかりですが、加熱式タバコはまだ販売には至っていません。

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FDAが懸念する"JUULING"とは?

JUULは米国の電子タバコ市場において2017年末頃から急速にシェアを伸ばし、現在では70%以上のシェアを占めています。

特にここ数年で青少年の間で非常に流行し、JUULを吸うことは"JUULING"と呼ばれ、ただの喫煙行為とは異なる特別な嗜好として扱われているようです。

確かにJUUL製品はシンプルでおしゃれです。製品そのものはうまくデザインされていると言えると思います。冒頭のアイキャッチ画像の女性が持っているスティックがJUUL製品です。USB端子で充電するので、長いUSBメモリーのような形状になっています。コンパクト、かつ喫煙デバイスに見えないデザインのため、厄介なことに親や教師に見つかりにくいようです。

米国疾病管理予防センター(CDC)が行っている米国青少年タバコ調査の2019年予備データによると、2019年には青少年の約1/4以上が30日以内に電子タバコを吸っており、また高校生の電子タバコユーザーの多くが、フルーツと、ミントやメンソールといったフレーバーを好むことがわかりました。

FDAの考えとしては、電子タバコも加熱式タバコも、従来の紙タバコからの脱却のために有益であるという考えから普及させる動きであったところに、青少年の使用が急増してしまったため、禁煙のためのツールどころか、喫煙習慣のゲートウェイになってしまっては本末転倒なわけです。

したがってFDAは電子タバコの青少年間での流行に強い懸念を示し続けており、これまで何度も規制を試みてきました。2016年8月8日にはすべてのタバコ製品に対する規制を、また2017年7月27日にも新たな規制を発表しています。

小売店には、27歳以下の客には写真付き身分証明書の提示を求めること、18歳以上の客にのみ販売すること、大人専用施設を除き自動販売機で販売しないこと、無料サンプルを配布しないこと、といった規制を求めてきました。

一方で電子タバコ製品についての申請期限はなぜか延長されることになり、2022年8月8日まで猶予されることになるなど、 対応としては若干ちぐはぐといった印象も否めません。

2019年3月13日に発表されたFDA長官の声明において、電子タバコ製品の申請時期は結局1年短縮され2021年8月8日までとなりました。この声明において、フレーバー付電子タバコの一部(タバコ、ミント、メンソール系風味を除く)の販売を禁止する可能性や、青少年がアクセスできない方法でのみ販売を許可する可能性について言及されています。

2019年9月9日には、学校への青少年へのプレゼンテーションを含むJUULの広告活動に対して警告書を発行しました。「JUULは紙巻きたばこよりはるかに安全であり、FDAもいずれそれを認めるであろう」「JUULは完璧に安全である」「JUULは紙巻きたばこより99%安全であるとFDAがまもなく発表しようとしている」などといった根拠のないプレゼンテーションをしたことに対する警告のようです。

そしてついに、2019年9月11日には、青少年の電子タバコ流行に対するトランプ政権の対策として、FDAが数週間以内にコンプライアンスポリシーを完成させると発表されました。 タバコ風味以外のフレーバー付電子たばこは、販売前にFDAの承認が必要となり、承認されるまでは市場から全て撤去されることになったようです。今回はミントやメンソール系も規制の対象に含まれたことが注目ですね。

これまでFDAは、電子タバコを未成年者に販売したことで、オンラインおよび実店舗の小売業者に8600を超える警告と1000を超える罰金を提示しています。違反している店が多すぎるような気がしますが(笑)

オピオイド危機について調べた時も思いましたが、米国は「規制する」ことに対して慎重な国なのでしょうか。大企業の政治献金のためか、自由市場を重んじるためか、基本的には各州に任せているからかはわかりませんが、日本であればすぐに規制に動きそうな問題でも規制への動きは遅いような気がしますね。

電子タバコが原因の疑いのある死亡症例が出た

米国疾病管理予防センター(CDC)は、36の州と1米国領から肺疾患の可能性のある380以上の症例が報告され、6つの州から6人の死亡症例が報告されたとしています。

これらの全症例において、電子タバコの使用歴があったようです。

また、ほとんどの患者はTHCを含む電子タバコの使用歴を報告しており、多くの患者はTHCとニコチンの使用歴を報告しており、またニコチンのみの電子タバコの使用を報告している患者もいたようです。

THCとは、大麻の主成分であるテトラヒドロカンナビノールのことで、これば大麻の使用者をいわゆる「ハイ」な状態にする成分です。

つまり、大麻、もしくはニコチン、もしくはその両方を電子タバコで吸った患者で、肺疾患の罹患例や死亡例を認めたということです。

しかしこれらの症例の原因が、どの製品なのか、もしくはどの物質なのかは、残念ながらまだ解明されていません。

したがって、CDCは、詳細がわかるまで電子タバコの使用を控えることを推奨しています。

今回、連邦政府が動いた背景は、この死亡例の影響が大きかったと思われます。

「青少年で電子タバコが急速に普及」+「電子タバコによる死亡例」⇒「電子タバコによる青少年の死亡例急増」となってしまっては大変なことになりますからね。

この件に関しては、タバコ株ホルダーかどうかは関係なく、できるだけ早く原因を究明してほしいですね。

アルトリアグループ[MO]への影響をどう考えるか

ポイントを整理してみる

実際にどのように規制されるかは、数週間以内にFDAから発表される予定のコンプライアンスポリシーの中身を見てみないとわかりません。

色々なケースを想定してみようと思いましたが、FDAから正式な発表があるまではわからない点が多すぎるので、現時点ではなかなか難しかったです。

無理やりあげるとするなら、ポイントは以下の点になるでしょうか。

  • フレーバー付電子タバコを成人にまで規制するのかどうか?
  • 青少年の電子タバコへのアクセスを実店舗およびオンラインでどのように規制するのか?
  • 電子タバコの規制がiQOSの販売戦略に影響を与えるかどうか?
  • 電子タバコそのものが死亡の原因であったのかどうか?

もしフレーバー付電子タバコを成人にまで規制した場合は、JUULの売上にはかなりの影響があるかもしれません。特に今回の場合は、ミントやメンソール系のフレーバーも規制の対象になっているのがこれまでの想定とは異なるポイントです。ただ、成人の喫煙者の場合は、結局は従来の紙巻タバコに回帰する可能性が高いので、アルトリアグループ[MO]の業績にはかえってプラスになるのではという考えも多いようですね。

次に青少年の電子タバコへのアクセスをどこまで制限するのかという点です。

JUULは、すべての小売業者に、JUUL製品がスキャンされると顧客のIDをスキャンすることを要求する新しいPOSシステムを導入してもらう計画を2019年8月に発表しました。しかし、この対策は実店舗では有効ですが、オンラインでは役に立たないと思われます。これまで有効な対策を講じることができなかったこともあり、おそらくオンラインに対する対策もしっかり要求されることになるでしょう。

私の考えとしては、もし青少年が全くアクセスできないくらいにJUULが規制された場合は、さすがにJUULの売上高に対する影響は免れないのではないかと考えています。

また、成人の場合は前述したように従来の紙巻タバコに回帰する可能性が高いと言われていますが、青少年の動きは読みづらいと思います。

なぜなら電子タバコが喫煙習慣のゲートウェイになっていたこともあり、青少年の場合は電子タバコだからこそ吸っていたというケースが多いかもしれないからです。また、単なる喫煙行為ではなく"JUULING"と呼ばれる特別な行為であることから、従来の紙巻きタバコの喫煙とは異なるものと認識されているところにも注目です。「JJUULINGをやめざるをえない」=「喫煙行為そのものをやめる」となるかどうかはニコチン依存度によるかもしれませんね。

連邦政府がようやく動き出した一方で、サンフランシスコ市では、市内の小売店で電子タバコを販売するだけでなく、オンラインで購入した電子タバコを市内に配達することも禁止する条例が2019年6月に可決しており、2020年に発効予定となっています。FDAの最終的な発表を受けて、各州や各市がどのように動くかも注目です。

次に、電子タバコに対する規制がiQOSの販売戦略にどのような影響を与えるかについてです。

基本的にはJUULとiQOSは異なるものではありますが、電子タバコのみを規制して加熱式タバコを規制しなかった場合、結局青少年がJUULからiQOSへ移行するだけになるという結果になりうるため、FDAとしては発売当初からiQOSに関しても規制せざるを得ないと考えます。

憶測の域を出ませんが、可能性としては、青少年のiQOSへのアクセスの制限、およびミントやメンソール系フレーバーの販売規制といったところでしょうか。

日本で販売されているiQOSにはかなりの種類のメンソール系があるそうですが、米国内で販売される際にはどうなるかも注目です。

最後は、電子タバコそのものが死亡の原因と確定した場合です。この場合はJUULをはじめとした電子タバコ企業は多大な影響を受けるでしょう。原因を取り除いた製品を開発できればいいですが、それも不可能な場合は企業の存続に関わることになると思われます。この件に関しては、他の3点と全く次元が異なる話になりますので、CDCの調査結果を待つしかありません。

アルトリアグループ[MO]への影響は?

ここまで色々なポイントをあげてできる限りの想定をしてきましたが、1つ気づいたことがあります。

アルトリアグループ[MO]はかなりしたたかな戦略をとっているのではないかということです。

JUULに出資したことによって、色々あっても結局JUULが順調に売上を伸ばし続けることになれば、出資元のアルトリアグループ[MO]も恩恵を被ります。

一方で、万が一JUULが大コケしたとしても、結果的には従来の紙巻タバコやiQOSの売上が伸びる可能性が高いです。

書いているうちにどっちに転んでもなんとかなりそうな気がしてきましたが、果たしてどうなるでしょうか。

まとめ

アルトリアグループ[MO]の方針としては、昨年末のJUULへの出資と、今年に入ってからのiQOSの承認からもわかるように、従来型の紙タバコから電子タバコや加熱式タバコへ移行していく方針であることは間違いありません。

JUULへの出資が失敗だったのではないかという意見もありますが、ここ数年にわたってFDAが青少年への電子タバコの急速な普及に関して懸念を示していたことはわかっていたことですし、電子タバコの規制に関しても織り込み済みであったのではないかと考えます。

以前の記事にも書きましたように、私は、アルトリアグループ[MO]によるJUULへの出資に関しては、従来の紙巻きタバコから新たなニコチン製品へ移行したいアルトリアグループ[MO]と、青少年への影響が大きいJUULへの規制を行いたいFDAの思惑が一致して行われた出資のような気がしてなりません。

電子タバコへの規制が本格的となったのにあわせて、満を持してiQOSが発売されるというシナリオになると予想しているのは私だけでしょうか?

関連記事です。

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